取引先の定量的分析による信用調査方法
(1)決算書から見る倒産のプロセス
プロセス1 |
プロセス2 |
プロセス3 |
プロセス4 |
P/Lの問題 |
B/Sの問題 |
資金調達の問題 |
倒 産 |
利益の減少 |
資金の減少 |
資金調達の不調 |
資金ショート |
売上高の減少 |
売上債権の増加 |
銀行借入 |
不渡手形 |
経費の増加 |
不良債権の発生 |
手形のジャンプ |
法的手続き |
特別損失の発生 |
在庫の増加 |
支払遅延 |
私的手続き |
(2)損益計算書(P/L)から判断
P/Lは経営成績を示すものなので、どのくらいの金額が黒字なのか、赤字なのかが当期のP/Lを見ればわかります。
売上高を100%とした場合の利益率を計算すれば、各種の利益率がわかり、収益性の比較が容易にできます。
■P/Lによる経営判断
良好 ← → 悪化
経営状態 |
健全経営 (増収増益) |
新規事業立上 (増収減益) |
リストラ (減収増益) |
ジリ貧経営 (減収減益) |
売上高 |
+ |
+ |
△ |
△ |
経常利益 |
+ |
△ |
+ |
△ |
①売上げの落ち込みは危険の第一歩、また急激な増加は粉飾に要注意
●売上はすべての源、売上減は危険
●粉飾決算の多くは、売上の水増しから始まる
①粗利(売上総利益)なくして利益なし
●粗利益の低下はダンピングの兆候である
●原価の考え方で粗利は大きく変動する
②固定費の高い会社は逆境に弱い
●固定費の高い会社は損益分岐点が高く、逆境に弱い
●支払利息が実質固定化する
③減価償却は非現金費目、決算操作にも注意が必要
●減価償却費 ⇒ 現金は出ないが、損益にマイナスに動く
●決算操作に使われることもあり、利益調整の弁となりうる
④営業外損益の注意点
●営業外でも継続的な損益の発生に注意
●「経常性=継続性」ではない。「たまたま」出た利益にダマされない
⑤特別損益にも要注意
●特別損益が本当に一過性かどうか、特に損失については注意が必要
●減損処理、減損会計が特別損失になっている場合には、その影響について検証が必要
(3)貸借対照表(B/S)から判断
●健全経営 → 黒字で資本の部が充足されている状態
●損失の填補→ 赤字になり、今まで積み上げてきた資本剰余金を取り崩した状態
●資本の欠損→ さらに赤字が続くと資本準備金や資本金を充当する必要がある
●債務超過 → 「資産<負債」の状態 ⇒ 中小企業の場合、準倒産ともいえる
①売掛金増は不良債権の予兆である
売上の伸びよりも売掛金の伸びが大きいときは、代金回収のリスクが高まっている
②買掛金増はキャッシュの無さ、買掛金減は信用不安を表す
● 売上の伸びより買掛金の伸びが速いときは、迅速な支払いができず、支払いを保留にしている可能性がある
● 買掛金の額が減っているのは、取引先の信用を失いつつあり、現金での支払いを求められているケースも考えられる
③在庫の別名は「売れ残り」、評価方法にも注意が必要
● 売上に比例して伸びている在庫は、業績が順調な証拠
● 売上の伸びに比べて在庫の伸びが速いときは、売れ残りが発生しており、その製品が必要とされていないことを示す。つまり業績の悪化の前兆である
④現預金の動きに注目する
● 現預金の減少 = カネ不足
「企業の倒産は、利益の減少ではなく、現金の不足が原因である」
● 現預金の減少は、取引先から現金での支払いを要求されている。つまり、危険と思われている可能性あり
● 必要な運転資金が現預金で確保されていない場合、資金管理のマズさを示す
⑤ 短期借入金は返済能力や資金繰り悪化要因である
⑥ 短期借入金が多いと、銀行に頭が上がらない
⑦自己資本比率は同業他社と比較する
● 自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産
● 一般的に、自己資本比率の低い会社は危険である
● 業界によって、適切な自己資本比率は異なるので、同業他社と比較して自己資本比率が低い会社は危ない
(4)キャッシュ・フロー(C/F)のポイント
■ 3つのキャッシュ・フロー
①営業活動によるキャッシュ・フロー
プラス⇒ 実際のビジネスでお金を稼いで知る証拠
マイナス⇒ 本業で儲かっていない
②財務活動によるキャッシュ・フロー
プラス⇒ 資金調達は順調な反面、借金過多の恐れあり
マイナス⇒ 財務が健全化している反面、資金調達に障害が出ている可能性も
③投資活動によるキャッシュ・フロー
プラス⇒ 資金繰りのために資産を売却している可能性あり
マイナス⇒ ビジネス拡大にカネをかけている
●会社がつぶれるのはキャッシュがないからであって、儲からないからではない
●誰が金ズルなのか知るべし
●営業活動によるキャッシュ・フローの注意点
(5)取引先決算書の分析方法と判断基準
■ 重要な5大指標
①<収益力>総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100
②<活動力>総資本回転率=売上高÷総資本
③<短期安全性(短期不況提供力)>流動比率=流動資産÷流動負債×100
④<長期安定性(長期不況提供力)>固定比率=固定資産÷自己資本×100
⑤<成長力>当期売上高÷前期売上高
■ ギルマンの「ディーラーの5大病」
①利益低下症・・・ |
総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100 |
②在庫過大症活動力・・・ |
商品回転率=売上高÷平均在庫高(回)
商品回転期間=365日÷回転率
在庫日数=期末在庫金額÷(売上原価÷365日 |
③受取勘定過大症・・・ |
受取勘定回転率=売上高÷(受取手形+売掛金)(回)
受取勘定回転期間=365日÷回転率 |
④固定資産過大症・・・ |
固定長期適合率
=
有形固定資産÷(自己資本+長期借入金)×100 |
⑤自己資本不足症・・・ |
自己資本比率=自己資本÷総資本×100 |
■ 経済産業省の破綻防止のための3つの警戒基準数値指標
①債務償還年数(8.0年)=年間有利子負債÷年間キヤッシュフロー(年数)
②インタレスト・カバレッジ(5.18倍)=営業利益÷支払利息×100
③自己資本比率=自己資本÷総資本×100