粉飾決算について
(1)粉飾決算の類型
類型 |
手法 |
目的 |
与信管理 |
正統派粉飾決算 |
赤字を減少させる 債務超過を回避する |
信用不安や 経営責任の回避
|
問題となる |
逆粉飾決算 |
黒字を減少させる |
脱税 |
問題とならない |
(2)粉飾決算の手口と発見方法
■P/L系の粉飾例
●売上高を増加 ⇒ 架空売上計上 など
●減価償却費の未計上または過少計上
●各種引当金の未計上または過少計上
●雑費や雑収入などの勘定科目操作
●連結子会社はずし
●オーナー社長所有の第2の会社
(3)合法的な粉飾
■B/S系の粉飾例
●在庫操作
●売上債権評価損未計上
●税効果会計の繰延税金資産
●資本取引の損益取引化
●架空資産計上と負債の簿外化
(3)合法的な粉飾
法令などに違反しないで、利益を作為的に計上する方法
■合法的な粉飾例
●固定費の配賦による合法的な粉飾
●売買目的外有価証券の益出しによる合法的な粉飾
粉飾決算がおこなわれた事例:D社
(1)D社の概要
●業種:羽毛商品・原料卸売
●決算期:6月・従業員:155名・資本金:28億5,400万円
●2008年4月 会社更生法の適用を申請して倒産
(2)D社の倒産の経緯と顛末
●羽毛原料(輸入シェア50%)と羽毛布団(製造シェア55%)製造販売の大手。
当初は羽毛寝具卸を中心に業績を上げ、次第に羽毛原材料販売や生活製品に業容を広げた。平成18年6月期から急激に業容拡大を目指し、国内外の関係会社、及び製販部門を子会社化するなど積極投資を行い、運転資金と金融債務の増大に対応できず資金繰りに行き詰った。平成19年4月28日、民事再生法の適用申請。(負債額)約330億円。「上場の準備をしていると聞いていたのに、まさか民事再生法の適用とは」。羽毛寝具業界の関係者はD社の破綻に驚きを隠せない。
●D社は、好業績を発表していた。しかし分析の結果、3期前の時点で決算書の粉飾性がみられ、資金繰りの危険性と経営破綻の恐れが判定される。
●D社の特徴は、
①3期間を通じて売上高(販売債権と仕入債務)増加率が極めて高い
②常に経常収支比率が悪い
③販売債権と仕入債務の立替期間がその都度バランスする
④手形割引が急増する
⑤投資資産が急増する
これらの状況が平穏に続くのは極めて不自然であり、作為的な粉飾操作があったとの疑念が払拭されない。D社には担保資産が無いにも拘らず、金融機関はD社の偽装した成長性に期待して融資と手形割引を続けたとみえる。財務諸表の粉飾性を見抜くことができず、不良債権を拡大したのである。
財務分析による経常収支比率は大幅に支払超過であり不一致係数と粉飾係数も悪いことから、実態は大幅な赤字状態と推定される。
大幅な支出超過が続いており、極めて危機的な資金繰り状況である。
D社の経営実態は3期ともに赤字状況であり、資金繰りは借入金と融通手形操作で補われていたと推定する。