収益力・生産性分析法
比率分析の流れは、まず、始めに会社が儲かっているかどうかの「収益性」を調べます。これは損益計算書を見て、各種の売上高経常利益率などの各利益率が、同業他社や業界平均よりも良いのか悪いのかを比較します。
次に「生産性」のチェックです。人の動きについては、労働生産性や労働分配率をチェックします。
収益性分析は、会社の収益力をみるための分析です。資本利益率がその代表的な指標です。資本利益率は、経営に投入した資本に対して経営の成果である利益がいくらリターンしたかを示す比率です。
この資本利益率は、売上高利益率と資本回転率に分解されますが、売上利益率と資本回転率に分けて活用することがポイントです。例えば、ある一定期間の資本利益率が向上した場合、粗利益率のある商品構成を増やしながら原価や費用を削減して売上高利益率を高めたのか、原材料の購買・在庫から製品の生産・在庫、そして流通在庫・販売を経て売上代金の回収までのプロセスで資本回転率を高めたのかを判断する必要があります。
また、事業戦略の策定においては、売上高利益率を高める事業を展開するのか、投入した資本の回転率を重視した事業を展開するのか、両方を重視した事業を展開するのかを事業モデルとして決める必要があります。
生産性は、インプットに対してアウトプットをどれだけ生み出したかの概念です。企業の生産性分析は、投入経営資源に対して生み出した価値がどれだけあったかの度合をみるための分析です。その代表的な指標は労働生産性です。労働生産性は、一人当たりいくらの付加価値を生み出したかを示す指標で付加価値生産性とも呼ばれます。ここで、付加価値は企業が生み出した価値を示す重要な概念です。
例えば、製造業の会社であれば、材料費や外注費などの外部購入原価に対して新たに付加した価値を意味しています。付加価値の計算は、売上高から材料費や外注費などの外部支出原価を控除したものです。流通業の場合は、売上高から商品仕入原価を控除したものです。なお、労働生産性や付加価値との関連で、その成果配分をみることがあります。成果配分の視点から、労働分配率・経費分配率・利益分配率の3つの指標があります。
財務の実数字を時系列で読むことは前回に述べましたが、比率も同様です。比率を時系列に見ることによって、良くなっているか悪くなっているかの傾向とその要因を読み取ることです。
これは、業種・業態や会社規模の標準数値と自社数値を比較して、自社の比率が良いかどうかとその要因を探り対策を考えるものです。
これは、同業他社や優良企業との数値と自社数値を比較して、自社の比率の改革余地を探り対策を練るものです。